旨いラーメンを作りたいラーメン屋と、旨いラーメンを食いたい客の利害を一致させない仕組み

本来、著作権者とユーザは「敵」じゃない。何かを創作する人は自分の作品を一人でも多くの人に知って欲しいものだし、ユーザはただひたすら「良い作品」を求めているだけだ。旨いラーメンを作りたいラーメン屋と、旨いラーメンを食いたい客の利害が相反するわけが無いのだ。

YouTube著作権の話をうまく説明している良記事。その中でラーメン屋の例が出てきたので、「現状、なぜ、旨いラーメンを作りたいラーメン屋と、旨いラーメンを食いたい客の利害が相反しているのか」を考えてみた。
普通、旨いラーメンを作りたいラーメン屋と、旨いラーメンを食いたい客の利害が相反するわけはない。ただ、ある条件を加えると、これが変わってくる。

  • ラーメン屋は6系列のチェーン店しかない

ラーメンを作りたい人はどれかのチェーン店に所属するしか無く、本店からの命令は絶対である。本店は他のチェーン店との競争に勝つため当然大がかりな広告戦略を行う。広告費は商品であるラーメン価格に転嫁される。そしてラーメンの質は各チェーン店で同じになるように管理される。こうなると「旨いラーメンを作りたいラーメン屋」という前提が壊れてしまうかも。

しかしながら、例えばYOUTUBEが存在するが為にDVD販売が促進されなくなる可能性についてはどのように考えるのだろう。

「見たいときに、見たい番組が見れる」という状況は、DVDを購入したり、あるいはレンタルをする事すらやめたり、やめない迄も機会を低くしていくと私は考える。

DVDを買うという行為は、結局、「いつでも観たいときにその番組が観られる」という権利というか機能を購入していることになる。AmazonではTVドラマ1シーズンの価格は2万円弱だが、この売上のうち何%がクリエーターや出演者に支払われているのだろう。TV放送時のスポンサー料で制作費用は回収できているのではないのだろうか?
TV視聴者は最初は無料で番組を観ることができるが、TV放送を見逃したりもう一度観ようと思ったらレンタルするかDVDを購入するしかない。しかし、「いつでも観たいときにその番組が観られる」ために2万円弱ものお金を払うのは高過ぎはしないだろうか。上記のラーメン屋の例なら、ラーメン職人に渡る金ではなくチェーン店の経営者の給料を増やすためのお金にしかならないのではないのか。

グーテンベルク活版印刷を発明したことにより、IT革命(情報革命)が起こり、一部の人間が独占していた知識・情報が大衆(それでも限られていただろうが)に広まった。これは情報媒体価格を一変させたという意味でチープ革命でもあった。
現代のチープ革命は、インターネットやデジタル技術によって情報を作成したり送り届けたり管理するコストを劇的に変革している。iTunesを使えばDVDよりは画質は劣るがYouTubeよりはまともなTV番組を有料で販売することができるが、日本のTV局はそれはしない。DVDの売上が減るからだと思う。こんな考え方は間違っている。(経営者としては間違っていないのかも知れないけど、競争原理が働いていないのが問題。)

重要な質問ですが、いったいどうやって儲けるのですか

The important question: How are you going to make money?

Hurley:スポンサー契約やダイレクト広告を売ろうと思っています。でも、コミュニティを作ることが大事で、みんなを広告で爆撃したいとは思いません。

Hurley: We're going to sell sponsorships and direct advertisements. But we are building a community, and we don't want to bombard people with advertising.

YouTube 創立者の「コミュニティを作ることが大事で、みんなを広告で爆撃したいとは思いません。」という言葉が心強い。今のTV CMの嫌いなところはTV番組と無関係なCMが流されていること。逆にGoogle AdSenseAmazonアフィリエイトのようなCMならありがたいと思うこともある。YouTube著作権者/視聴者/スポンサーのWin-Win-Winの関係が構築できれば、このサービスは成功するだろうし、YouTubeが失敗したとしても、別の誰かが成功させるだろう。Napsterが失敗してiTunesが成功したように。
現在、YouTubeで無承諾コンテンツをアップしている人もそれを観ている人も、好きでそうしているわけではないと思う。他に選択肢がないからそうしているだけだと思う。もし正規のコンテンツがアップされていれば皆、それを参照するだろう。それにしても、日本には「われわれは違法ダウンロードと戦う。訴えるつもりも、無視するつもりもない。競争するつもりだ」というスティーブ・ジョブスのような人はいないのでしょうか。


そういえば、YouTubeの「好きな時に好きな番組を観られる」が主流になり画質が余り重視されないのであれば、巨額の費用を掛けて推進しているハイビジョン放送って何なのでしょう。なんだか、Nintendo DSPSPWiiPS3の関係に似ている気がする。