商店の未来

タイムセールスくらいでしか差別化できない商店

9月1日のワールドビジネスサテライト(WBS)では、タイムセールスが広がっているという話題を取り上げていた。タイムセールスはチラシ等での特売と違い、近隣店の知らないところで安売りができるので究極の差別化と言われているとのこと。
当初は生鮮食品等で始まったらしいが、今では電気店はもとよりネットでも展開されていて、楽天セミナーなどで積極的に進めていた。

小さくなりすぎた世界

このニュースを聞いて、つくづく世界は小さくなってしまったと思う。品物を仕入れて利益を上乗せして客に売るという小売の商売は、そろそろ限界に来ているんじゃないかと思えてならない。
同じ品物であれば、どこの店屋で買っても同じものしか手に入らない。何か違いがあるとすれば価格ぐらいしかない。価格競争になれば業界自体がダメになるし、店舗間で価格交渉すれば法律違反になる。
これまでこういった問題が表面化しなかったのは、物流や情報網が今ほど整備されていなかったからだろう。客は手間と時間をかけて探し回ればより価格の安いものが手にはいるのだろうが、それに見合うだけのメリットが無かったので、ほどほどのところで妥協するしかなかった。逆にほどほどのところで妥協することが客にとって賢い選択だったのだと思う。

それでも生きていくために

ところが今では個人でさえが簡単に世界中の価格を比較できるようになってしまった。少しでも安い店の品物が売れ、高い店は売れなくなる。より安く販売する一番手っ取り早い方法は、より安く仕入れることであり、安く仕入れるには大量に仕入れるしかない。当たり前の話だが、実行するのは難しい。それを実行してきた企業の一つがヤマダ電機だと思う。

家電量販店首位のヤマダ電機が14日時点で同業7位、ベスト電器の発行済み株式の5.24%(429万株)を保有していることが、ヤマダが21日に関東財務局へ提出した大量保有報告書で分かった。機関投資家を除けば実質的な筆頭株主になる。

経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版

これからもその拡大路線を続けるらしいが、その創業者であり社長のコメントが以下である。非常に分かりやすいので引用させていただく。

「全国チェーンに3、4番手はありえない。
1、2位は利益が出て、3番は利益がなく、4番はつぶれる。
食うか食われるかという競争がまだまだ続くだろう。
圧力は厳しかったけれども、あえて先頭を切って風を受けてきたことが、ヤマダの強さにつながった」

山田昇(株式会社ヤマダ電機代表取締役社長)

この社長のコメントにはほぼ同意見なのだが、競争に参加しているメンバーの認識に違いがあると思う。お客が家電を買うのなら必ずしも電気屋さんで買う必要はなく、最も安いところで買えば良いのだから。
商品の価格には人件費や地代等が含まれており、それらを引いた残りが、利益となる。つまり、よりコストをかけずに販売すれば利益は大きくなる訳だが、ヤマダ電機のような全国チェーン店は人件費や地代の効率化には限度がある。人がいなければモノは売れないし、店舗がなければ客が来ない。ところが、店員も店舗もいらない店屋も存在する。テレビショッピングや通販カタログ、ネットショップである。

店員も店舗もいらない商店

これらの中でネットショップであるAmazonが分かりやすいと思う。通販なので、客かAmazonが輸送費を負担するというデメリットがあるが、無数の商品が陳列してある店舗はネット上にあり、実世界にはでっかい倉庫があればいい。ある意味、究極の商店だと思う。今は品揃えもシステムも不十分だが、今後改善していける可能性は大きいと思う。

Amazonが向こう側からこちら側に現れる日

商業都市の駅前のように立地が良いところで適切な価格で商品を売れば、商品が売れないということはないだろう。Amazonがネット上で十分な規模まで拡大を続け、売上の伸びが頭打ちになったら、こちら側、つまりリアルの店舗を出すような気がする。リアルの店舗は信用に繋がるし、それまでネットショップを敬遠してきた人もひきつけるかもしれない。パレートの法則Amazonの販売データを使えば売れる商品/売れない商品をどこよりもうまく選別できるのではないだろうか。

AmazonのPB商品

西友でもセブンイレブンでも、PB商品(プライベートブランド商品)を開発して他社と差別化しているが、Amazonもそのうちやると思う。というか、やらない理由が思いつかない。

究極の商店

究極の商店は、商店、つまり小売りが存在しないこと。メーカーから客が直接仕入れ値で購入できることだろう。本当にそんなことができるようになるのか分からないが、もしかしたらGoogle様がやってくれるかも知れない。

まとめ

結局、ヤマダ電機の社長さんの言うとおり1〜3番手ぐらいしか生き残れないと思う。特にリアルの店舗はかなり分が悪いと思う。リアルの店舗で品定めをして、実際にはネットで購入ということが当たり前になれば、リアル店舗は無駄骨になる。(だからといって、ネットの店舗と価格競争して勝てるとは思えないし。)

追記(2011/08/08)

記事を書いてから4年後に書いたことが広まってきているらしい。