著作権と特許

音楽配信メモ 「著作権保護期間の延長問題を考える国民会議」を発足しました&お願い

著作権保護期間「死後」で計算されるのは、寿命の長さによって不公平が生じるので、「作品」ごとに一律「公表後○年で切れる」というようにした方がいい。個人的には作品の経済性などを考えると、公表後20年程度でパブリックドメインになるのが妥当ではないかと思っている。

さすが津田さん、良いこと言うなぁ〜。だいたい、どんな優れた作品であれ作者が死んでからも独占権が残る今の仕組みがおかしい。
それにしても、この「作品」を「公表」してから決まった年数で自由に使えるようになるという仕組み、何かと似ていると思ったら、著作権と同じく知的財産の特許とよく似ている。著作物と特許のどちらも、「作者」の「アイディア」に基づく「創作物」なのだから、逆に何が違っているのかすら分からないほど似ている気がする。もちろん、特許は特許庁に申請して登録され管理されるものだから仕組みは違うが、「アイディア」を形にしたモノという意味では同じだ。本質的な違いが何かありそうな気がするが、ぱっと思いつかない。強いてあげれば、「著作物は人の役に立たないが、特許は役に立つ」。
そして制度的に決定的に違うのが、片や作者の死後50年間独占権が与えられ、片や申請後決まった年数で公共財となり独占権は無くなる。なぜ、役に立たない著作物がこんなに保護され、役に立つ特許が保護されないのだろう。
もちろん、特許の独占権を長期間認めると技術の発展に弊害があるのは分かる。では、著作権が死後50年、30歳で発表して80歳で死んだとしたら100年も独占されることになるが、それは文化の発展の弊害ならないのだろうか。

それぞれ、法律を比べてみるとやはりよく似ていることが分かる。
法令データ提供システムー著作権法

(目的)
第一条  この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

(強調は引用者)

法令データ提供システムー特許法

(目的)
第一条  この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

(強調は引用者)

それぞれの法律で「著作者の権利」と「発明」、「文化の発展」と「産業の発達」と、保護する対象と発展するさせる対象が違うが、どちらも創作活動を奨励し、社会を発展させるという目的は共通している。そして、その保護期間は次のように書かれている。

法令データ提供システムー著作権法

(保護期間の原則)
第五十一条  著作権の存続期間は、著作物の創作の時に始まる。
2  著作権は、この節に別段の定めがある場合を除き、著作者の死後(共同著作物にあつては、最終に死亡した著作者の死後。次条第一項において同じ。)五十年を経過するまでの間、存続する。

(強調は引用者)

法令データ提供システムー特許法

(存続期間)
第六十七条  特許権の存続期間は、特許出願の日から二十年をもつて終了する。
2  特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。

(強調は引用者)

ここがよく分からない。著作権法特許法もそれぞれ目的も独占権を認めるというやり方も似ているのに、保護期間だけが全く違う。なぜ違うかの理由は書いてないし、それを匂わせる規定もない。
特許の保護期間が20年(場合により5年まで延長可能)というのは初めて知ったが、津田さんの「公表後20年程度でパブリックドメインになるのが妥当」というアイディアは特許法を参考にしたんだと思う。どちらも似たような法律なのだから保護期間も同じ方が分かりやすい気がする。

どうやら、役立つアイディアの保護期間が20年で、役立たないアイディアの保護期間が死後50年の理由は分かりそうもないらしい。
仮に特許法の保護期間が申請者の死後50年まで認められている(さらに死後70年まで延長しようとしている)ような世界があったらどうな社会になっているだろう。たぶん、今のアメリカとは比べものにならないくらいの訴訟社会になっているのではないだろうか。大企業は強い特許を独占し(強い特許があるから大企業になるのかも)特許収入だけで何十年も経営できるのかもしれない。中小企業が似たような新製品を出せば弁護士軍団に潰されて、逆に大企業は特許を買い取ってより強くなる。こんな社会は悪夢としか思えない。
もしかしたら、私たちは文化面では、将に悪夢のような世界にいるのかもしれない。(他の世界との比較ができないので、その世界の住人たちは気づいていないのかもしれないが。)


※「役立つアイディア、役立たないアイディアうんぬん」は、本意ではありません。(念のため)