世代別の犯罪検挙者数を比較してみた

まとめによると、加害者は60歳代が15人と最多で、50歳代が11人、30歳代が9人などと続いた。

この記事について、はてブコメでは多くの老人批判が寄せられています。はてブがスターの数に応じて上位に表示されるようになったため、そういうコメントが目立つように可視化されています。

ただ、中には以下のようにサンプル数が少なすぎて判断できないというコメントもありました。

これしきのデータで「これだから年寄りは」なんて言い出すのではそれこそ根拠薄弱の俗流若者論と変わらないじゃないか。まして「俺は年寄りがキレてるのを目にした」なんて主観の話は論外。

そもそも「JR東日本八王子支社管内」だけで記事を書く理由が分かりません。


そこで、上記の記事では数十人程度のデータしかありませんでしたが、2009年(平成21年)の42万人分のデータがある警察庁の検挙人員(検挙者数)を世代別に調べてみました。

世代別の人口

同じ条件で比較したかったので、まず2009年の各世代別の人口を調べました。ソースは総務省の統計データです(年齢(各歳),男女別人口及び人口性比−総人口,日本人人口(平成21年10月1日現在))。たとえば、ある世代同士の検挙者数が同じになったとしても、片方の人口が2倍だとすれば検挙される割合は人口の少ない方が2倍になります。また、警察庁のデータは14才以上なので人口も同じ条件にしました。

  • 14才以上の世代別人口

検挙者数全体

警察庁の「平成21年の犯罪」を見ると認知と検挙のデータがあります。年齢別のデータがあるのは検挙だけのようなので、今回は検挙を元に調べました。また、データは検挙件数と検挙人員に分かれていますが、人数を知りたかったので検挙人員(罪種別 犯行時の年齢別 検挙人員(総数表・女表))でまとめました。

  • 世代別の検挙者数

検挙者数で見ると圧倒的に10代が多いです。さらに10代は人数も全世代中でもっとも少ないので、100万人あたりで換算すると更に差が広がります。

  • 100万人あたりの世代別検挙者数

もとのデータをみると10代の約9万人の検挙者数のうち5万5千人は窃盗となっており、もっとも多い割合を占めています。あまりにも10代だけが突出していたので、カテゴリを絞って同じように見てみることにしました。

凶悪犯

殺人、強盗、放火、強姦などの凶悪犯について同じように世代別でまとめてみました。

  • 世代別の凶悪犯の検挙者数

凶悪犯の検挙者数で一番多かったのは20代でした。ただ、これも100万人あたりで換算すると次のようになり、10代の割合が一番多くなります。

  • 100万人あたりの世代別凶悪犯の検挙者数

風俗犯

10代ばかりが悪く見えるデータだったので、違う傾向のデータを探して見つけたのが、賭博やわいせつなどの風俗犯です。

  • 世代別の風俗犯の検挙者数


  • 100万人あたりの世代別風俗犯の検挙者数

こちらは合計でも100万人あたりで見ても30代が一番多いという結果でした。

まとめ

警察庁の2009年42万人の検挙者数の傾向からすると、

  • もっとも検挙され、また検挙される割合も高いのは10代
  • 凶悪犯に限ると、検挙数が多いのは20代ですが、割合が高いのは10代
  • 風俗犯に限ると、検挙数・検挙される割合が共に高いのは30代
  • 40代以上の世代が他の30代以下の世代と比べて、検挙数が多い項目は見つけることが出来なかった

となります。

また、「それでもボクはやってない」という映画も作られたように逮捕・検挙されたり、また法廷で有罪になっても、本当は無罪の場合もあります。しかし、統計として見る分には警察庁のデータは信頼できると思います。


ちなみに、マスコミは若者による凶悪犯罪が増えているという報道を行い、ネットでは若者の犯罪は減少しているという記事をよく見かけます。警察庁のデータでは、若者の検挙数が減少し、高齢者の検挙数が増加している(年次別 犯行時の年齢・性別 検挙人員)ので、傾向としてはネットで見かける記事が正しいように思えますが、人口比で見たときにどうなるのかは分かりませんし、このことが高齢者が犯罪を犯しやすいことを示す訳でもありません。